アンティーク ロレックス バブルバック 分解掃除と不具合修理

ロレックス バブルバックロレックスの片方向巻き上げ式自動巻をバブルバックと言いいます。
以前にも同じような書き出しで始めた記憶があります。

独特のケース形状やユニークダイアルをはじめとした色々な文字盤のバリエーションもあることから根強い人気があります。
ムーブメントの作りもシンプルで頑丈に作られているため60年以上の長い年月がたった今でも調子よく動く個体が多いこともその人気のある理由の一つでしょう。

キャリバーナンバー(機械番号)の刻印がないものが多く、そういった個体は部品を探す場合に厄介です。
そんな場合はムーブメントの径と構造やローター形状からキャリバーナンバーを判断することができます。

なぜバブルバックの記事が多いのか?

バブルバックの記事は過去に
https://tokei-shibata.com/semi-bubbleback-parts-2118.html
https://tokei-shibata.com/rlx-bigbubble-2163.html
https://tokei-shibata.com/bubble-back-1728.html
https://tokei-shibata.com/rolex_bubbleback_1-1274.html
とあります。この記事を書こうと思った時もまたバブルバックネタかと思いました。贔屓というわけでもないのに何故だろうと。

普通に分解掃除しました。だけでは記事のボリューム的に足りないのです。分解掃除だけでなくなにか特筆することがなくてはならない。
その基準をみたすものがバブルバックに偏っているのではという結論に辿りつきました。

そんな特筆すべき?魅力がつまったバブルバックの修理をご紹介します。

バブルバック キャリバー620

お預かりのキャリバー620 バブルバックです。

すぐ止まるということでお預かりしました。

診断


手巻きの時の感触が軽い。この感触はアレです。
ゼンマイの外端が折れたか剥がれているパターンです。とりあえずゼンマイ交換は必須です。

見積もりを進めます。
リューズの時間合わせの感触に思うことがあって文字盤裏側を拝見、おしどりバネが破損していました。

このままでも使えないことはないのですがお客様と相談のうえ、交換ということになりました。

思うことあって とはこちらの件

時間合わせの時に空回りします。
部品の摩耗に加えて巻き芯が先端に行くにつれ細くなっているのでしょう。
巻き上げはできるが時間合わせはすべるという状態です。

さらに自動巻ユニットを見てみます。

巻き上げローターの軸が折れています。

取り付けた状態で折れると割りとそのまま機能するのです。
分解して外してしまうと修理しないと機能復元しないというやつです。修理が必要ですね。

部品を揃えます

これのゼンマイが割と厄介なのです。
いろいろ試した結果、交換する場合はオリジナルより少し長めのゼンマイにしたほうがいい結果を得られています。
このサイズがベストと判断して該当するゼンマイを使っています。

おしとりばねはラッキー、無事入手可能でした。

部品を直します

交換ではなく修理での対応です。

①ローター真


こちらの部品交換もありですが修理にて対応します。

修理内容は入れほぞと言われる修理方法です。


圧入するほぞ軸を作ります。
軸径はΦ0.4mm

折れた部分を整えて穴を開けます

合体!

修理完了です。

②巻き芯

この状態では巻き芯だけをオリジナルに交換しても歯車の方の穴が摩耗しているので両方交換する必要があります。
ツツミ車は入手難、巻き芯はどちらにしろ別作予定でしたので摩耗状態に合わせて巻き芯を作ります。

四角と四角が噛み合っていません。これでは滑ります。

巻き芯を作っていいきます。

現状品の摩耗した歯車と細い巻き芯の比較です

磨耗した歯車に合わせて作った特別サイズ巻き芯
噛み合います。空回りする心配はありません。


しっかりと動作します。

分解掃除

部品が揃ったのであとは通常の分解掃除です

動作も好調です

機能テスト

ゼンマイに関しては持続時間のテスト
修理した部品、巻き上げ機能に関しては巻き上げ効率をチェックします。
巻き上げ効率に関しては軸穴の摩耗等の不具合箇所を全て直しても手巻きでの全巻き状態まで持っていけないこともあります。
手巻きだと40時間持つところが自動巻あげだと30時間といった具合です。手の運動量にもよりますがそこは年代を考えると限界もあります。
今回は自動巻の巻き上げでもそこそこの結果を得られました。

修理完了

比較的修理箇所の多いバブルバックの修理のご紹介でした。
このまま永くお使いいただけますように…。油切れにはご注意です。
今回の修理料金
分解掃除 ¥30,000+税
オシドリバネ ¥20,000+税(時価)
ゼンマイ交換 ¥6,000+税(時価)
ローター真ホゾ入れ ¥15,000+税
巻き真別作 ¥20,000+税
となりました。