ロレックス セミ バブルバック ヒゲ修正と分解掃除

アンティークなロレックスです
通称〝バブルバック〟と呼ばれるモデルです

名前の由来はケースの裏蓋がポッコリ出た形状が泡のようだからとか

今回載せている時計はバブルバックの中でも後期型の“セミバブルバック”と呼ばれるcal.645を搭載した時計です
バブルバックよりも少し薄型になりポッコリ感がほとんどなくなっています

分解、不具合調査と内部機構

なんだか調子が悪いとお預かりです
歩度測定器にかけて見ると片振りが9.9msで平置きの日差が-2秒…と見せかけて日差が出ない通称“砂嵐”状態、悪いですね

分解

分解していきます

まずはローターを外します

覆い被さるように搭載される自動巻ユニット

これを外すとラチェットが着いている以外はいたって普通な手巻きのセンターセコンドの機械です

内部機構 自動巻き部分

中身の不具合に触れる前に自動巻ユニットを紹介しておきます

ラチェットを多用した巻き上げ機構です
とってもシンプルですね
細い爪など使わずにバネのラチェットだけで巻き上げます

巻き上げに関しては問題なさそうだったのでこちらは分解掃除のみでいい感じです

不良個所の修正・ヒゲ

それでは中身の不具合箇所の修理に入っていきます

片振りに関しては調整してないだけでしょうがなんだか測定器を見る限り片振り以外にも原因があります

不具合箇所を探します、なんとなくですがヒゲの動きがおかしい気がする…
というわけでテンプ受けを外して裏返してみます


テンプが付いた状態ですので時計に組み込まれた時のヒゲの形状がまさにこの写真の状態です
普段はテンプ受けに隠れて全体が見えませんが裏返せばよく分かります

ヒゲは隣り合うヒゲの渦の間隔は等間隔である必要があるというセオリーがあります
赤丸部分は完全に等間隔ではないですね
これでは正しくヒゲが伸縮しません

等間隔でない原因を見極める必要があります
ヒゲが途中で曲がってピッチが狂っているのかそれともヒゲ持ち、ヒゲを固定しているところから曲がっているのか?
当てずっぽうでやって外れた場合はとってもめんどくさくなりますから肝心なところです



テンプ受けからテンプ一式を外してさらにヒゲを抜きます

上から見てヒゲの形状確認、内端がアレな気がしますが他は綺麗な状態です
諸々の事情により内端はノータッチです

そうなると次に考えられるのはヒゲ持ち部分からの曲がりです

テンプなしでヒゲだけ固定して上から確認します

真ん中の赤い部分、ルビーの穴石、テンプの止まるところです
つまりここにヒゲの中心が来なくてはいけない、写真では完全にセンターがずれてしまっています

この偏心は修正する必要があります
ヒゲの外端、外がわの部分を曲げてセンターに来るよう調整します
緩急針方式なので緩急針が通る同心円を描く外端より内側で調整します

巻き上げヒゲなのでちょっとテクが必要です
ヒゲを浮かした状態で水平を保ったまま調整しなければいけません


センターが出ました
水平も出ているようなのでヒゲの問題はクリアしました、たぶん

ヒゲ以外には問題が思い当たらないのでこれで元気よく動いてくれないと頭を抱える必要があります

振り付け・調整

時計に組付けてみます

予定通り元気よく動き出しました
とりあえず一安心です

測定器の数字は…

歩度測定器にかけてみます

振り角325度、充分すぎる元気の良さですね

この時計の拘束角は52度とはっきりわかっています
測定器の拘束角も52度に設定してありますので信用に足る振り角ですね…振らないよりはマシなんですが振りあたりしそうなのでその他の調整が必要です

振り当たり調整

ここから写真を撮ってないのですが自動巻ユニットをつけると降り落ちする事があるので期待しましたが変わらず、少し香箱に心当たりが有ったので油を変えて308度に、この辺で勘弁していただきましょう

緩急針で調整したあと針をつけてケーシング、ランニングテストを行います
シクロテスター実測24時間で+30秒ないくらいの精度で修理完了となりました

元祖バブルバックではないですがセミバブルバックの修理でした
自動巻きを組み込むと機械どころか緩急針がかけらも見えない本家バブルバックのほうもまたご紹介できたらと思います