ウランガラスクロック 修理その1

戦前の置き時計です
古いだけあって、ただ分解して洗って組むだけでは終わりませんでした
そんな素敵な修理をご紹介します(長文のため2回に分けて更新します)

ウランガラス


SマークのSEIKOSHA製です
この枠、ガラスなのですが何とも言えない不思議な色をしています

ブラックライトを当ててみました

強い蛍光を示します
この枠はウランガラスでできています
ガラスにウランが練りこんであるので紫外線蛍光を示します

昭和初期までウランガラスは普通に製造されていたそうです
戦後はウランの危険性が認知され全国的に製造は中止されました
なんだかきれいなガラス枠ということで食器だけでなく置き時計の枠などにも使われていました
この幻想的な光に魅せられてウランガラスのコレクターになる人もいるとかいないとか…

ウランなんて危ないんじゃないのか!?なんて思われるかもしれませんが放射線の被爆量は製品を一年間身に着けてレントゲン撮影一回分程度らしいですのでご安心ください
上の写真は完成して調子を見ている状態の写真です

部品確認

↓実際にお客様からお預かりした状態はこちら↓

なにやらよろしくない状態です
まず欠品している部品がないか確認します

とりあえず組んで確認です
欠品があれば組んでも正しく動きません
どうやら輪列などは問題なし、ホゾ(軸)の曲りなどもありません

しかし(一目見たときから無いのは分かっていましたが)大事なヒゲゼンマイがありません
テンプという部品にくっついているもので、外そうと思っても外せるものではないのですが…

なんか主ゼンマイの間からヒモが出ている?

あ!

なるほど!ヒゲゼンマイと思われるものが切れていますね!
こんな状態のヒゲゼンマイは初めて見ました
きっと衝撃か何かでテンプが外れてヒゲを主ゼンマイが巻き込んでしまったのでしょう

ちなみに本来のあるべき形はこちら↓

というわけで完全にヒゲゼンマイは使用不可でしたので新しく用意する必要がでてきました

昭和初期のひげゼンマイ不良の場合

昭和初期の部品はさすがにありません
が、昭和中期~後期に活躍?したB型目覚ましというもののヒゲならストックがあります
整形前で長さも合わせていない生(ナマ)ヒゲです

ヒゲ玉を作る

しかしテンシンといわれるヒゲゼンマイを止める軸の部分が細すぎて止めることができません

ヒゲ玉といわれる部分の穴の大きさが全然違いますね
広げることはできますが縮めることはできません

というわけで作りましょう
真鍮棒を切り、ヒゲ留部分を考えて少しセンターをずらして穴をあけます
切込みをいれて細く切れ込みを入れたところにヒゲをかしめてとめます

出来上がりです

ヒゲの長さを合わせる

生ヒゲはこの次に大まかな長さに切る必要があります
時計の心臓部ともいえるこの部品
掛け時計でいえば振り子と同じ役割をしています
渦を巻いていますがまっすぐにしてやればこんな形です

Xの長さは歯車の数や下の重りの重量で変わってきます

適した長さに切ります
長さの出し方はヒゲを適当な長さで仮組して4番者という歯車の一回転するスピードをストップウオッチで計測しちょうどいい長さを探し出します

さて、長さも決まりました
組み込んでいきましょう

組み上げ

この長さ合わせだけで正確に時間を出すのは不可能なので微調整ができる機構が組み込まれています
それが緩急針(かんきゅうしん)です

↓別の時計ですが↓

外周一週目のヒゲを挟むように二本のピンがたっていて緩急針を動かすことでヒゲの長さを変えたのと同じような状態にすることができます
緩急針は時計の地板本体に組み込まれているので円形には動きますが位置を変えることができません

緩急針の間にヒゲを通して
ヒゲを固定して
固定して
固定

できない…

困ったことになりました
図解するとこんな状態です

緩急針の位置ではヒゲが短すぎて長さが全く足りません
こんな状態で組んだら一日に何時間も進む時計となってしまい、使い物になりません

緩急針の位置にヒゲの外周一周目を通すにはどうしたらいいでしょうか
ヒゲの間隔を全体的に縮める?

※ ※ ※ ※ ※
ヒゲゼンマイ調整の大原則の一つに「渦のすべての個所におけるAとA’の幅、ピッチが同一であること」といいうものがあります
これが崩れると正確な時を刻むのは難しくなるのです
※ ※ ※ ※ ※

大原則にしたがってピッチを変えるのは却下です
そもそも1度に一か所づつヒゲを曲げても360度が10周で…無理ですね
それに1度って間隔が大きすぎです
さてどうしましょう

その2へ つづく