ウランガラスクロック 修理その2~ブレゲひげ作っちゃおう~

ヒゲを組み込む秘策

ヒゲ玉まで作ったもののヒゲのピッチの関係で組み込めないことが発覚しました
ピッチ替えるのは不可
しかし緩急針は内側にある
緩急針を無理やり外に曲げて広げればなんとかなりそうだけどちょっと気が引ける…

というわけで「終末曲線を持つ巻き上げヒゲ」を作ることにしました
なんだかカッコいい名前ですね
よく雑誌なんかにはブレゲひげという名前でかかれています
かの有名な時計師アブラハム・ルイ・ブレゲさんが発明したことで有名なブレゲひげです
超高級時計にはよく使われていますね
ロレックスはモデル関係なしにすべて巻き上げヒゲになっています

巻き上げヒゲのメリット・デメリット

どんなメリットがあるのか簡単に言うとテンプが振り落ちしても歩度が変わりません
もっと簡単にいうと時計の進み遅れが少なくなります

なら全部巻き上げヒゲにしたらいいじゃんと思いますが
・手作業で作るしかない
・製作する難易度が非常に高い
・時間がかかる
などの理由から最近は目玉の飛び出る値段の時計にしか使われていません

長々と説明しましたが図解するとこうです

青い線のところでヒゲを一段持ち上げて緑色の線のような流れで緩急針に向かっていくというものです
図には書いてませんがきちんと外端も作る必要があります
図もそうですが実際に作ったものも終末曲線にはなっていませんので揚げ足取りは勘弁してください
「終末曲線を持つ巻き上げヒゲ」って書きたかったのです

再洗浄・注油・組み上げ

さあ組み込みましょう

もう少し上から横から写真を撮っておけばよかったと後悔しています
参考に腕時計の巻き上げヒゲがこちら

ヒゲがないと分かった時点で一度分解掃除していますがヒゲ合わせ・巻き上げヒゲ作りと紆余曲折している間にホコリや汚れをよんでいるのでもう一度洗浄・注油をして完成です

巻き上げヒゲにしたおかげかお渡し前のランニングテスト中はかなり調子よく動いていました
先日お客様に調子をお尋ねしたところ問題なく動いているとのお言葉をいただきました
一安心ですね

個人的にとても楽しい仕事をさせて頂きました
自由に修理させていただきありがとうございました

正確な製造時期は不明ですがウランガラスの製造時期である第二次大戦前としておよそ80年前の時計です
80歳でもまたこうして息を吹き返して現役でいると思うと嬉しくなってきます

最新の電池時計はどんなに大事にしても80年後に動くかは怪しいですがこの時計は修理しながら大事に使えばこれから80年後もきっと動きます
手間はかかるけど長く使える時計もいいですね

今回もコアでロングな修理記事におつきあい頂きありがとうございます
思い出の時計動くかな?なんてものがありましたら是非一度ご相談ください