Landeron アンティーク・クロノグラフの分解掃除と調整

某有名メーカーのアンティーク、手巻きクロノグラフです。

この辺りの時代、ほとんどのブランドがムーブメントメーカー(エボーシュとも言って、中身の機械専門のメーカーです)の機械に自社の刻印をして文字板とケースを製作して商品にしています。

もちろん刻印だけでなく地板や脱進機など細かい仕上げはブランド独自でやっていたりします。

こちらもそんなエボーシュの手巻きクロノグラフ、エボーシュ名はLanderon ランデロンです

不具合の確認・検証

中古で購入したがクロノグラフが動かないということでお預かりしました。
どこがおかしいか見てみましょう

クロノグラフの動作が不安定

クロノグラフの動作不良はいくつもの原因が考えられます。
部品の曲がりや破損の可能性、汚れで動きが悪い等々、触った感じはどうも汚れでは無さそう。
各レバーが動くべきところまで動いていないような感じです。
おそらく動作不良の原因は調整用の偏芯ネジが変にいじられているせいのようです。

リセット時の針位置がずれる

もう一つの不具合はクロノグラフ針をリセットした際に、戻るべき12時位置からずれてしまうとのことでした。

まずは針のリセット位置のずれ、針のハカマのゆるみがありました。
針の付け根が緩くて衝撃で動いてしまうようです。
原因はそれでしょうがもう一つ、リセットハンマーとカムの位置を確認しておきます。
ここは問題なさそうです。

各所の点検と分解掃除

不具合の原因の目星がついたところで分解掃除を行います。
調整ネジの異常以外に部品の曲がりやサビ、汚れがあるかもしれません。

クロノグラフ部分 分解と不良個所探し

文字盤を外した文字盤の下です。クロノグラフの積算計は30分計だけなのでシンプルです。

分解していきます。
部品を外すとサビが出ています。ですが傷は浅い…

輪列にも問題はなさそうです。

現行のものではあまり使われていない鉄製のゼンマイ。
こちらも問題はないようです。

組み上げ・注油

錆を落として洗浄後、組み立てます。

リセットハンマーとセンターの抑えを付ける前の状態です。
クロノグラフ自体が高級品ですがその高級品カテゴリの中ではお値打ちな機械を提供するランデロン、低価格化のためにクロノグラフの秒針規制のレバーなどは省かれています。
すっきりして見えるのはそのせいですね。

不具合への対処:クロノグラフの偏芯ネジ調整

分解掃除をして汚れなどは除去、各レバーの摩擦部分などの注油も完了しました。

調整用の偏芯ネジをまわして各レバーの動作範囲を適正値に戻します。

クロノグラフ各レバーの動作範囲の調整

クロノグラフは各レバーの動きを制御する沢山の調整用偏芯ネジがついています。
各部品の工作精度の甘さなどを調整ネジを使って各個体ごとでフォローしようというスタイルですね。

アンティークですから作られてから長年がたっています。
今回のように誰かが調整ネジと知らずにいじっていたり、部品の摩耗がおきていたり…。

分解注油マニュアルによる偏芯ネジの適正値とは?

各偏芯ネジを回して調整していきます。
AがBするためにはこのレバーがここまで動かなければいけない…なんて感じで調整して行きます。
①を合わせたら②が干渉してダメだったり…

この調整、とっても手間がかかる。
今回のようによく理解せずに適当に調整ネジををまわされたものは非常にやっかいでした。
あまりの適正値のでなさに音を上げたくなりました。
手間がかかりすぎてもうダメ、楽したい、、、メーカーから調整マニュアルが出ていないかと調べました。
そして見つけました、該当キャリバーの解説書。
これで楽チン!
メーカーから出されている解説書、分解注油マニュアルにはこう書いてあります。

『図に示す偏心ネジは絶対に触らないこと』

触ってあったらどうするんじゃーい。

ハイ

がんばって調整して修理完了です。