電気時計 アイクロン
さっそくごめんなさい
いつも通り写真を撮り忘れていたので外観写真は修理したものとは別の当店のマル秘コレクション(笑)からです
愛知時計の「アイクロン」という時計です
目次
時計動力の進化
時計の構造の進化の歴史は時計精度と動作時間の長さを追い求めたものでもあります
電気が身近になるまで一般的な動力は重りかゼンマイしかありませんでした
※一般的でないところでは空気を動力にしたものなんかもあります
重りでは最長一週間程度です
ゼンマイはというと、ねじり振り子という特殊な振り子を採用してとにかく長寿命を実現した400日巻というのがありました
が、温度変化や振動による制度の影響が大きくやはりそれが問題で普及には至りませんでした
こちらの写真は同じねじれ振り子ですが100日巻です ムーブメントはとってもシンプル
ゼンマイで実用的な精度を保ったものではせいぜい60日程度でした
そんな技術の進歩とともにクオーツで精度、長寿命を確立するまでの間、時計の技術の進歩のはざ間に生み出された時計の一つがこのアイクロンです
愛知時計のアイクロン
電池寿命は一年間、振り子式ですのでそれなりの高精度で動作します
割と時間も正確で一年手間いらずというのは当時としては革新的なことだったのでしょうね
アイクロンのムーブメント紹介
このアイクロンはクオーツ時計が普及するまでに販売されたものの中でもある意味、特殊な構造をしています
そんなアイクロンの中身を修理ついでに紹介していきたいと思います
愛知時計 アイクロンの中身です
乾電池一本で一年間動作します
振り子で精度を出す点においてはそれまでの普及品と変わりません
中身を出してみます
今時代に発売された電気で動く時計としてはちょっと例外の時計です
振り子の動力がモーター駆動なのです
アイクロン以外にも電気時計は複数発売されましたがいずれも振り子自体を電磁石を使って振らせて振り子の振動を動力にかえています
しかしアイクロンだけはゼンマイをモーターに替えて時計を動作させていますからそういった意味では異端児です
なぜこの方式が普及しなかったのか、この時計の現役当時は産まれていないのでよくわかりませんが、動作中常にモーターが回転し続けるので機械部分の磨耗、汚れによる止まりが他の方式に比べて多かったため…と思われます
あとは特許とかでしょうか?
振り子に力を加えるのは一瞬の上に構造上歯車が少し逆回転もするのでただ単にモーターをつければいいわけではありません
モーターに想定以上の負荷がかかったときに動力を逃すクラッチみたいなものがついています
時計は電気式ですがチャイムはゼンマイ駆動です
時計の針が回るとこのゼンマイが巻かれていきます
修理時に完全開放してしまうと針をぐるぐる回してゼンマイを巻いてやる必要があります
電子制御でない機械はこういうのがおもしろいですね
分解掃除・注油・組み上げ
修理に入ります
全体的に低トルクで動作するので磨耗する前に汚れで止まります
特にこのクラッチ部分の油がどろどろになるとギヤがあがりきったまま降りてきません
モーターは回っているのに動かない状態になります
汚れ以外には特に問題なさそうです
きれいに掃除して注油していきます
修理完了です
起動レバーをお忘れなく
今回紹介したクオーツ誕生までの空白期間に生み出された、半機械式とも言える電池時計たち
実は動かすのに一手間必要なのです
新しい電池を入れて振り子を動かしてみたけど動かない…すぐ止まってしまう…
なんていうときは起動レバーを動かし忘れていませんでしょうか?
低消費電力で長時間動かす設計のために電池の力だけではモーターを始動させることができないのです
そのためこのレバーを引いてモーターを物理的に回して動かしやてる必要があるのです
セルなしの原付みたいですね
一年に一回のことなので忘れがちですが電池交換をしたときはこんな一手間が必要です
このクオーツへと変わっていく時代の半機械式ともいえる時計を修理する人がだいぶ少なくなっているそうです
修理するといいつつ中身の機械を丸ごと最近のものに交換してしまうこともあるようです
半機械式からクオーツの電子制御へムーブ交換では別の時計に変わってしまいます
その時計本来の動きを第一に考えて修理していきたいと思っています
外見を生かすことがまず一番大事なことですが中身の機械も持ち主と同じ時代を生きてきています
できるだけ中身の機械、構造をいかしたままの修理をご提案しています