ロレックス ヨットマスター

ロレックス ヨットマスターロレジウム

この時計、ものすごく銀色です

中身はcal.3135 テンプが両持ち(2本のネジで固定してある)になっているムーブです

数年前ロレックスが新型ムーブを出すとかいう記事を読んだのですがまだ高級機だけなのでしょうか?
多分まだ現行品もこの3135を使っているはずです

3135でも微妙に違います、よく見るとヒゲがブルーのパラクロムひげゼンマイになっています

帯磁性が向上しているらしいです

たしかこのパラクロムひげゼンマイが使われているかどうかは外からは製造年から推測することしかできず
同じ型のモデルでもひげゼンマイが通常タイプだったりパラクロムだったりします

不具合の確認

こちらのヨットマスター、突然止まる、という不具合でお預かりしました

歩度測定機にかけると 平置き-1秒で240度振っています
なるほど、そこそこ普通に動いています
故障原因予測に一番困るパターンですね

電波時計で時間をぴったり合わせて放置
すると時間を合わせてから二時間くらいでぴたりと停止しています
時計を少し振ってやるとまた元気よく動きだします

 

針スレもないようでこの症状から推測されるのはある程度ゼンマイがほどけると抵抗が大きくなって止まる、ということです

中身の汚れ具合から見て自動巻き機構に問題ありと見ます
自動巻きモジュールを外して同様のテストを行います

時計は止まらず規定時間以上調子よく動いています、原因はここにアリです

原因箇所の特定ができました、後編ではこのユニットの不良個所を確定、修理します

不具合に対する対処

具体的な不具合箇所とその修理をご紹介します


外した瞬間に具合が悪い原因が分かるぐらいに赤サビの削れカスが積もっていました、掃除する前の写真撮ってないですが

赤さびの発生源はこいつです

自動巻きのローター芯が油切れして摩耗、さらに少し湿気があってサビが回った、と推理します
公式ではこの部分の注油はオイルなのですがグリスのほうが具合がいいような気がします

グリスの方が具合がいいような気がしますが製造元がオイルというので当店では基本的にオイルを使っています
何十年と蓄積されたメーカーのノウハウの結果としてオイルなのでしょうから素直に従うのです

ローター芯の交換

ローター芯を交換する必要があります

純正品で交換作業を進めます、部品が入荷しました


ローター芯はかしめてあるので打ち抜く必要があります、上下のタガネの選定とセンター出しが肝です


キレイに抜けました

新品の芯のカシメ

次は新品の芯をカシメます
各キャリバーごとにサイズ、種類があります

3135のタガネをセットします


このままかしめるとローターの鏡面部分に傷がつきますのでうまく養生する必要があります

キレイにかしめることができました

ローターの動作確認

ローターの修理が終わったので自動巻きモジュールの組み込んでローターのあがき(あそび)を確認します
きつすぎても緩すぎてもいけません

あがきが少なかったり大きかったりする場合はロータークリップと呼ばれる部品を交換して対応します
形は同じなのですが違う厚みのものが何種類か準備されています

ローター芯がサビていた割にはクリップの摩耗は全くと言っていいほど見られませんでした
予想通りクリップの交換は不要でそのまま使えるようです

 

自動巻きモジュールの修理が終わった状態でいったん仮組み、動作に支障がない事を確かめます

はい、写真は撮っていません

問題なさそうなので全体の分解掃除をしてランニングテストを行い不具合のない事を確認します
各姿勢差を測定して修理完了です