19seiko/19セイコー cal.91** その1


通称 “19セイコー” と呼ばれる懐中時計があります

国鉄に正式採用された精度お墨付きの時計です
鉄道はダイヤの関係で正確な時計が求められました
精度の悪さが原因で列車の正面衝突なんていう大事故が実際に起きていたらしいです@USA
多くの有名時計メーカーもやはり下積み時代に鉄道時計として名をとどろかせています

この19セイコー、たしか昭和46年までが懐中時計用の機械であるcal.91系のものが使われていました
その後、腕時計の機械を流用したものにモデルチェンジします

今回紹介するのは前期型の昭和44年製、製造終了間際ですので機械として成熟したころのものです

国鉄に勤めていたお客様よりお預かりしました
かなりケースの状態がいいです
時計の性格上、裏蓋がすれてめっきが剥げてしまうのですがほとんど剥げていません

不具合の確認・修理

ケースの状態はいいようですが中身の機械はどうでしょう?
確認していきます

テンプの動きがおかしい


裏蓋を開けて確認するとテンプの動きがおかしい…テンシンが折れています
この時計はテンシンと言われる部品が折れないようにする耐震装置がついていません
ですので比較的多い故障がこのテンシンの折れです

先端の軸の太さが0.1mm程度ですので落とした衝撃などで折れてしまいます

これがテンシンとテンプと振り座とヒゲ、主要部品はセットになっています

※テンシンの表記がいろいろありすぎてどれか正しいのか不明です、今回カタカナ表記で統一しました
(てんしん・テンシン・天真・天芯…)

お預かり時点では「国産だし、部品屋さんに聞けばテンシンあるでしょ」
なんて思っていたのですが問い合わせてみると…ないそうです かなりレア

想定外に部品がなかったので作るしかなくなりました、残念

部品なし・別作対応 テンシンのサイズ詳細

テンシン別作という作業、現物合わせで作る場合太さは割となんとかなるのですが高さが何とも難しい
テンシンの設計図なんてのがあると大変便利なのですがまずありません
インターネットで調べてもまず出てこない

が、記憶の片隅に19セイコーのテンシンの設計図を見た記憶があるのです
中学生の時に祖父(故人)に見せてもらった記憶です

というわけでおじいちゃんノートを引っ張り出して来たらやっぱり書いてありました
すごいぞ記憶、ありがとうおじいちゃん
孫、助かりました

インターネットで調べても公開している人はいないようなので載せておきます

昔のCMW試験の課題がこの19セイコーだったと祖父から中学生の時にききました
その時の資料でしょう
おかげでかなり楽ができます、数字通りに作ればいいだけですから

テンシンの作成手順

さあ作りましょう

まずはテンシンを外す必要があるので機械からテンプを外します、ヒゲも外します

折れた方の穴石を見ると錆びて汚れてます、見るからに折れたような感じになっています

振り座を外さなければいけません、いろいろ専用工具がありますがこれを使います

パーフェクトです、振り座を抜きました


※振り座を抜く前の写真を忘れましたが振り座の位置をマークしておきます
マークしておけば片重りをとるのを楽できます
油性ペンでマークしますがこの塗料も片重りの原因になるので組み付けたら綺麗に落とす必要があります


テンシンも抜きますが…なんか硬い

カシメが立派な気配ですね、無理やり抜くとテンワを曲げてとってもめんどくさいことになるので旋盤で抜きます

旋盤に取り付けて赤丸の部分をさらってやると、するっと外れます

製作に入ります

材料はスチール棒を青焼きして作ります

ところで100分の1ミリ単位の長さはどうやって測るのか?
こんな便利なものがあります

アキシャルマイクロメーター、こいつは便利です


テンシンの作り方、いろいろありますが僕はこんな手順で作ります
ヒゲ側→突っ切りで振り座側を粗整形→持ち替えて精密整形→テンワ取り付け→ジャコツール


テンシン完成です

長くなってきたのでここで区切ります

振り付けなどは次回 第2部:後編に続きます